Dix

Muguet
すずらん

 14年前パリに駐在していた頃、16区のパッシー通りに程近いアパルトマンに住んでいました。
 部屋に面した通りはバスの通る坂道で、下りきるとセーヌ川に出ます。アパルトマンの近くには、お惣菜屋さん、肉屋さん、パン屋さん、ワインショップ、カフェ、ホテル、クリーニング屋さん、マルシェ、・・・があり、たいへん便利なところでした。パン屋さんには、昼時・夕食時になると店の外まで行列ができ、たいへんな賑わいでした。

 51日、このパン屋さんの前に、101束のすずらんの小さなブーケをバケツに一杯いれた花売りさんが出現。私も早速一束買ってみました。

すずらんは、風が吹くと本当に鈴の音がしそうな可憐な花。小さな花なのに、その香りはおどろくほど印象的で、なるほど、『ムッシュ・ディオールが最も愛した香り』なのもうなづけます。1956年に香水として『ディオリッシモ』という名でデビューして、これまで多くの人に愛され続けているのは、清涼感のあるこの香りだけでなく、すずらんの少し控えめで上品な花姿にもよるのだと思います。

 さて、花屋さんでもないのに街角ですずらんが売られているのは、フランスでは51日は”すずらんの日"だから。日頃お世話になっている方や、友達、恋人、家族にすずらんの花束を贈るという特別な日なのです。すずらんの花を贈られた人は、幸福になれると言われています。この日に限り、子供たちに花売りが許されるのだそうです。

 私が買った花売りさんは、残念ながら(?)かわいいプチ・ギャルソンではなく、花売り“おじさん”でしたが・・・           

 そういえば、ブダペストでもこの時期、バスターミナルの広場の花売りの人々が、すずらんの花束を売っていました。ヨーロッパのあちらこちらで、このような習慣が残っているのですね。(Mai2007)